2023年5月15日(月)
うつ病の治療では1950年代に抗うつ薬が発見されたことにより、治療に劇的な進歩がみられるようになりました。
薬の進歩がなく、患者さんの数だけが増え続けていたら、社会は大きく混乱していたことでしょう。
抗うつ薬の治療は長期に及ぶことが多いのですが、症状が回復してから、何のためいつまで服薬する必要があるのでしょうか?
初発のうつ病では、順調に治療が進めば症状は約3分の2の方は、2-3ヶ月程度で病前の状態に回復します。
しかし、回復したからといってすぐに薬をやめてはいけません。
うつ病は再発の多い病気です。初発のうつ病であっても、約半数は再発することが知られています。
このため、一定期間は再発予防のために抗うつ薬の服薬を続ける必要があります。
欧米の治療ガイドラインでは、再発予防の服薬は4-9ヶ月必要だとされています。また、再発したうつ病では2年以上の再発予防の服薬が勧められています( American Psychiatric Association, 2010; Lam et al, 2009)。
再発すると、次に再発するリスクはさらに高まり、再発を繰り返すとうつ病は治りにくくなります。
再発するとうつ病が慢性化するリスクが高まります。慢性化すると治療の終わりが見えなくなります。
うつ病になると、その方の本来持っている能力が発揮されにくくなり、大きな損失をこうむります。
このような損失が長期化することを避けるために、再発予防ししっかりと行い、うつ病を慢性化させない治療が必要だと思います。
高橋心療クリニック
院長 高橋道宏