不登校は「甘え」ではありません——「学校に行かなくてもいい」と伝える理由

不登校は「甘え」ではありません——「学校に行かなくてもいい」と伝える理由

2026年5月25日(月)

不登校のお子さんを抱える親御さんと診察室でお話ししていると、このような状況をよく伺います。

朝になると、どうしても起き上がることができない。
頭痛、めまい、腹痛、吐き気などの身体症状が出る。
無理に学校へ行こうとすると、涙が止まらなくなってしまう。

こうした姿を見ていると、「怠けているのではないか」「甘えではないか」と感じてしまうこともあるかもしれません。

親御さん自身も、

「このままずっと学校へ行けなくなるのではないか」
「社会に戻れなくなってしまうのではないか」

と、不安になるのは自然なことだと思います。

しかし、診察室でお子さんたちの話を聞いていると、実際にはまったく逆のことが少なくありません。

子どもたちは、「学校へ行かなければならない」と思いすぎて、自分を限界まで追い詰めていることが多いのです。

真面目な子ほど、自分を責めている

不登校のお子さんは、家でただ楽をして過ごしているわけではありません。

むしろ、

「今日も行けなかった」
「みんな普通に行けているのに」
「お父さん、お母さんに申し訳ない」

と、自分を強く責め続けていることが少なくありません。

「学校に行きたくない」のではなく、「行かなければいけないと思っているのに、体と心が動かない」のです。

特に、責任感が強く、真面目なお子さんほど、その苦しさを強く抱え込んでいることがあります。

周囲から見えている以上に、本人はすでに十分苦しんでいるのです。

「行ける時に行けばいい」と伝える理由

私は診察室で、お子さんや親御さんに対して、

「学校は、行ける時に行けばいいですよ」
「今は無理して行かなくても大丈夫です」

とお伝えすることがあります。

すると親御さんは、

「そんなことを言って、本当に大丈夫なのだろうか」
「そのままずっと行けなくなってしまわないだろうか」

と不安になられることがあります。

そのお気持ちも、とても自然なものです。

しかし、あえて「休んでもいい」と伝えることには理由があります。

今の子どもたちにとって、学校という場所そのものが、強い不安や緊張を感じる場所になってしまっていることがあるからです。

「行かなければ」が、体を動けなくさせる

人の心と身体は、強いプレッシャーがかかるほど、かえって動けなくなることがあります。

「絶対に学校へ行かなければならない」

強い緊張や不安が続く

朝になると、腹痛や吐き気などの身体症状が出る

結果として学校へ行けない

「また行けなかった」と自分を責める

学校への不安がさらに強くなる

このような悪循環に入ってしまっているお子さんは少なくありません。

「行かなければ」という思いそのものが、心と身体を追い詰めてしまっていることがあるのです。

「行かなくてもいい」から始まる変化

ところが、不思議なことに、

「今は無理して行かなくてもいい」
「行ける時に行けばいい」

と伝えられたあと、少しずつ登校日数が増えていくお子さんがおられます。

「無理に行かなくてもいいんだ」と感じることで、心の緊張が少し緩む。

すると、朝の腹痛や吐き気が軽くなり、自分から「少し行ってみようかな」と動き出せるようになることがあります。

診察室では、このような変化がみられることがあります。

「行かなくても大丈夫」と安心できることが、結果として、子どもたちが動き出す力につながっていくことがあるのです。

おわりに

不登校の支援で大切なのは、「学校へ戻すこと」だけを目標にしないことです。

まず必要なのは、

「自分はダメな人間ではない」
「今のままでも受け入れてもらえる」

という安心感です。

その安心感の中で、子どもたちは少しずつ、自分の力を取り戻していくのだと思います。

高橋心療クリニック
院長 高橋道宏

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