適応障害——休むだけで治る病気ではありません
2026年6月29日(月)
適応障害で休職に入られた患者さんから、診察室でこのような言葉をよく伺います。
「休職して仕事から離れたら、少し楽になりました」
「でも、仕事に戻ることを考えると、また眠れなくなります」
「せっかく休んでいるのに、根本的には治っていない気がします」
仕事から離れて一時的に体調が落ち着いても、復職が近づくにつれて再び強い不安や体調不良に襲われる。
このような経験に悩まされている方は少なくありません。
なぜ、しっかり休養しているはずなのに、このようなことが起きてしまうのでしょうか。
適応障害とはどのような病気か
適応障害は、仕事や学校、人間関係など、特定の環境から受ける強いストレスによって、心や身体にさまざまな症状が現れる病気です。
主な症状としては、
・憂うつな気分になる
・不安や緊張が強くなる
・夜眠れなくなる
・頭痛や腹痛、倦怠感などの身体症状が出る
といったものがあります。
この病気の大きな特徴は、「ストレスの原因となっている環境から離れると、症状が改善しやすい」という点にあります。
そのため、まず、休職や休学によって環境から離れ、心身をしっかり休めることが何よりも大切です。
なぜ休養だけでは十分ではないのか
しかし、適応障害は、ただ休んでいれば元通りになってすべてが解決する病気ではありません。
一時的に環境から離れてエネルギーが回復しても、
・同じ環境
・同じ考え方
・同じ仕事の進め方
のままで元の場所へ戻ってしまうと、再び同じストレスを受け、症状が再発します。
「また体調を崩してしまうかもしれない」
という強い不安が出ることもあります。
これは、脳が過去のつらい経験を覚えていて、自分を守ろうとしている自然な防衛反応です。
休養はとても大切ですが、それは回復のゴールではありません。
休養によって心と身体のエネルギーを回復させ、その後に環境との向き合い方や仕事の進め方を少しずつ見直していくことが、本当の回復につながります。
診察室で大切にしていること
当院では、お薬で症状の土台を整え、十分に休養をとっていただいた後に、次のようなことを一緒に考えていきます。
まずは、自分を追い詰めていたストレスの要因を整理することです。
正式に、
「すべて完璧にこなさなければならない」
「周りに迷惑をかけてはいけない」
といった、自分を苦しめていた考え方に気づいていきます。
その上で、
・自分のキャパシティに合った仕事の進め方
・困ったときの相談の仕方
・負担を減らすための環境
などを一緒に考えながら、復職のタイミングも焦らず進めていきます。
大切なのは、無理をして以前と同じ自分に戻ることではありません。
適応障害をきっかけに、自分に合う新しい働き方や生き方を見つけていくことなのです。
おわりに
「休んでいるのに会社へ戻るのが怖いのは、自分の心が弱いからだろうか」
そう思って、一人で焦りや後ろめたさを抱えてはいないでしょうか。
決してそんなことはありません。
適応障害は、適切な休養と治療、精度高く環境や考え方を少しずつ見直していくことで、改善が期待できます。
焦らず一歩ずつ、自分らしい生活を取り戻していきましょう。
高橋心療クリニック
院長 高橋道宏


