不眠症——眠ろうとするほど眠れなくなる理由
2026年7月20日(月)
本格的な夏を迎え、夜の蒸し暑さから寝苦しい日が増えてきました。
診察室でも、この時期は睡眠に関するご相談をよく伺います。
「布団に入っても、なかなか寝付けません」
「夜中に何度も目が覚めてしまい、朝から体がだるいです」
「明日も仕事なのに眠れないと、時計を見るたびに焦ってしまいます」
早く寝なければいけないと思えば思うほど、頭がますます冴えていってしまう。
このようなつらい夜を過ごしてはいないでしょうか。
誰でも一時的に眠れなくなることはありますが、睡眠への悩みが続き、日中の体のだるさや集中力の低下などがみられる場合、それは「不眠症」という治療ができる病気かもしれません。
「眠ろうと焦ること」が悪循環を生む
不眠症の多くには、睡眠に対する「とらわれ」と、それに伴う悪循環があります。
本来、睡眠は自律神経の働きによって、心身がリラックスしたときに自然ともたらされるものです。
しかし、一度「眠れない夜」を経験すると、人は布団に入ること自体に緊張を覚えるようになります。
「今夜はちゃんと眠れるだろうか」
「もう2時だ、あと4時間しか寝られない」
このように「眠ること」を義務やプレッシャーと感じると、交感神経が優位になり、脳は覚醒した状態になってしまいます。
安心したくて時計を確認したり、無理に眠ろうと努力したりするほど、かえって眠りは遠ざかってしまうのです。
回復のために大切なこと
治療では、必要に応じて睡眠導入剤などの薬が役立つことがあります。一時的に薬の力を借りて「眠れた」という安心感を得ることは、過度な緊張を和らげるためにも有効です。
しかし、薬を飲むことと同じくらい、睡眠に対する考え方を少し見直すことも大切です。
診察室では、「眠れなくても、横になって静かに休んでいるだけでも身体は休息を取ることができます」とお伝えしています。
「絶対に眠らなければならない」と考えすぎないことも大切です。
また、
・布団の中で時計を見ない
・しばらく眠れそうにないと感じたら、一度布団を出て静かに過ごす
・朝は眠くても同じ時間に起き、日光を浴びる
といった生活習慣も睡眠の改善に役立ちます。
眠れないことを何とかしようと力を入れ続けるよりも、「眠くなったら眠ればいい」くらいの気持ちでいる方が、自然な眠りは訪れやすくなります。
おわりに
「眠れないのは、自分の神経質な性格のせいだ」
そう思って、一人で焦りや孤独を抱えている方は少なくありません。
しかし、不眠症は適切な治療と生活習慣の見直しによって改善が期待できる病気です。
背景に、うつ病や不安症など、ほかのこころの不調が隠れていることもあります。
眠れない夜があっても大丈夫です。
睡眠をコントロールしようと頑張りすぎるよりも、日中の生活を整え、自然な眠気を待つことが、回復への近道になります。
高橋心療クリニック
院長 高橋道宏


