2016年11月27日 月曜日
最近では世の中の理解が進み、うつ病になると「ゆっくりと休んで下さい」などと優しい言葉をかけられることが多くなりました。しかし病気が長引くと、家族や知人など身の回りの人から「やる気がない」とか「病気を治そうとしていない」などと批判的に言われてしまうことがあります。本当にそうなのでしょうか?うつ病になる方は元々やる気がない人なのでしょうか?頑張ればやれる力があるのにやらないだけの状態なのでしょうか?
うつ病になる方は、元々とても几帳面で意欲的です。日本の精神学者、下田光造氏は、うつ病になる方の性格特徴について、几帳面、きまじめ、責任感や正義感が強く、凝り性で、仕事熱心といった特徴をあげています。また、このような性格の方は、ごまかしや大雑把なことを嫌い、なにごとも徹底的にやらなければ気がすみません。決して病気に甘んじているわけではありません。やりたくても思うようにできない自分が歯がゆくて仕方ないのです。
思うように活動できないのは、心と身体の疲れ過ぎのためです。脳科学的に言えば、脳の中のエネルギー不足ということになります。脳内物質(専門的には神経伝達物質と言います)であるセロトニンの機能が低下しているのです。セロトニンは感情や意欲に最も関係がある神経伝達物質です。ですから、休養することとセロトニンの脳内濃度を増やす抗うつ薬を服用することで脳内エネルギーを回復することがうつ病の回復につながるのです。
治療によりうつ気分は順調に回復しますが、回復してくると外見上あまり病気に見えないことがあります。このような時に誤解を受け、前述のような批判的な言葉をかけられることが多いのです。外見ではある程度元気そうに見えても、回復力が弱いとすぐに疲れてしまいます。また元々やる気があるため、回復期に頑張りすぎ、空回りすることが多いです。周囲の理解を得つつ、自分の気持ちにもブレーキをかけながら治療することがうつ病回復の秘訣です。
院長 高橋道宏