2019年8月5日(月)
うつ病は、「気分が重くてつらい」「何もする気がしない」「何をしても楽しめない」「物の見方が否定的になり、自分がダメな人間だと感じる」など「こころ」の症状だけでなく、「身体がだるい」「疲れやすい」「頭痛がする」「胃がムカムカする」など「からだ」の症状もあります。
体調不良から内科などを受診したものの、いろいろな検査をしても全く異常がなく、心療内科や精神科を紹介され、うつ病と診断される場合が多くあります。うつ病は気分の落ち込みだけでなく、身体の不調がサインとなることがあるのです。
身体症状の中でも、特に痛みは大きな苦痛となります。これまでの研究によると、「うつ病患者さんの6割が痛みを経験する」「様々なストレスの中でも、痛みは特に大きなストレスになる」とされています。痛みは大きなストレスとなりうつ病を悪化させる。うつ病が悪化すると痛みが更にひどくなるという悪循環を起こしやすいのです。
うつ病の時にみられる痛みとしては、頭痛、背中の痛み、腰痛などがあります。この他に、目の痛み、口の中の痛みなどもあります。
時には、二つ以上の痛みを伴うことも少なくありません。中には、全身のいたるところが痛くなる場合もあります。うつ病の時の痛みの特徴は、うつが治ると痛みも改善するという点にあります。
うつ病でみられる痛みは、「神経の緊張状態で起きる」脳からやってくる中枢性の痛みです。打撲や関節痛などの炎症性、末梢性の痛みとは異なります。
ですから、このような痛みには、「痛み止め」こ抗炎症剤や消炎鎮痛剤は効果がありません。うつ病の治療薬である抗うつ薬が効果的なのです。
うつ病で不足しているセロトニンやノルアドレナリンは痛みを和らげる働きかあることが知られています。これらを増やして元通りの状態にしてくれる抗うつ薬は、うつ病でみられる痛みに対する合理的な治療法なのです。
原因不明の痛みがあったら、うつ病を疑ってみましょう。うつ病を治療する中で、うつ病による痛みは自然に回復していくのです。
院長 高橋道宏