2021年3月8日(月)
不安神経症は、最近の国際的な診断名では「全般性不安障害」と呼ばれています。
不安神経症は考え過ぎの病気です。同じことばかり繰り返し考えるため疲れてしまいます。他のことを考えれば良いのですが、どうしても同じことばかり考えてしまいます。
これが「とらわれ」です。不安神経症の本質は、まさにこのとらわれにあります。
とらわれがあると、不必要に同じことばかり考えエネルギーをすり減らし、他のことが疎かになります。この結果、仕事、家事、勉強などが疎かになり、課題が山積する結果となります。
同じことを考える割には、とらわれている問題そのものは解決せず、不安は募るばかりです。
思考がいわばロックされた状態になり、同じ方向でしか物を考えられないため、解決が得られないのです。このような状況から脱出するためには、とらわれから解放される必要があります。
とらわれから解放されるためには、同じことばかり考えないようにするのです。
しかし、これは簡単にできることではありません。不安神経症になると、とらわれている問題が解決されないと、次のことを考えることができないのです。
このような強固なとらわれから解放されるためには、目の前の必要なことを一つ一つやっていくことが大切です。一日の中でやらなければならないことは多々あります。
不安にとらわれるとその一つ一つが疎かになります。このような行動は、課題を多くため込むことにつながり、不安が増していきます。
不安へのとらわれから解放されるためには、不安を抱えつつも、必要な行動は続けていく。いつも通りのペースを保つことが必要です。
森田療法(1919年)では、不安神経症を治すために「不安をあるがままに受け止め、日常生活の実践を前進させる」ことを教えています。
時代が変わり、診断基準や病気の呼び名が変わっても、この大切なエッセンスは変わることがありません。
同じことを考え続けているだけでは、不安神経症は治りません。抗不安薬を飲むだけでは薬への依存が増すだけです。
不安でも、日常生活の実践を淡々と続けることで不安神経症は完治に向かうのです。
芦屋 心療内科 高橋心療クリニック
院長 高橋道宏