2021年4月5日(月)
パニック障害になると突然不安が発作的に襲ってくるようになります。不安発作は短時間で終わりますが、過呼吸、動悸などの自律神経症状を伴うため自己コントロールが難しく、どうしてもお薬の助けが必要になります。
不安発作が起きたときにすぐに役立つのは抗不安薬です。抗不安薬は服用すると、大体30-40分ぐらいして効いてきます。抗不安薬が効き始めると、これまでのひどい不安発作がうそのように劇的に治まるため、不安発作が起きた時には大変役立ちます。
しかし、抗不安薬は依存性があるため、補助的に使うことが大切です。1日3回毎日服用するなど、薬にどっぷりとつからないようにしましょう。発作が起きた時、あるいは明らかに発作が起きそうな時に補助的に使いましょう。長時間電車に乗るとき、運転前など発作が心配な特定の状況で予防的に使うこともできます。
一度不安発作が起きてしまうと、発作が起きたときの恐怖感が長期間心の中に残るため、また発作が起きるのではないかと不安になります。これを予期不安と言います。予期不安があると、不安が怖くてビクビクし、電車に乗れない、自動車を運転できない、外出できないなど、行動が回避的なものになり、日常生活への積極性が失われます。
予期不安をなくすためには、不安発作を完全に予防する必要があります。そのためには、SSRIというセロトニンの働きを強めるお薬が効果的です。SSRIは元々抗うつ薬として開発されましたが、不安を抑える作用もあり、パニック障害、強迫性障害、社交不安症などの不安障害の治療に幅広く用いられています。パニック障害の発症にはセロトニン系の異常が関与していることは明らかであり、その意味でSSRIは抗不安薬よりもより原因に対する根本的治療と言うことができます。
SSRIには依存性がなく、薬の効果が切れ目なく持続するため、抗不安薬のように薬が切れた時に急に不安になることがありません。予期不安を予防するためには、長期的な服薬が必要なため、抗不安薬よりもSSRIを服薬する方がより治療的です。
最新の治療ガイドライン(『パニック障害ハンドブック-治療ガイドラインと診療の実際』医学書院 2008)によると、SSRIを6ヶ月から1年間服用した後、お薬を徐々に減量していくことができます。減量して特に問題がなければ、パニック障害は完治したことになります。抗不安薬は徐々に減量しても再び再発作が起きやすく、完治に結びつくことは稀です。
パニック障害は決して完治しない病気ではありません。完治を目指して最新のガイドラインに基づいた治療を続けていきましょう。
高橋心療クリニック
院長 高橋道宏
2021年04月04日