2021年6月7日(月)
人前であがってしまい、話せなくなる。字を書こうとすると、過剰に手が震えてうまく書けない。食べているところを他人にみられると、過度に緊張して食べられない。
このような症状で困っておられる方は、社交不安症というこころの病気であるかも知れません。
社交不安症は、かつては対人恐怖症と呼ばれていましたが、人に対する過剰な不安、緊張が原因で起こります。
症状の核心は、人前で恥をかいたり、恥ずかしい思いをすることを極度に恐れてしまうことにあります。
いじめやパワハラなどが原因で起こることも多く、単なる「気の持ちよう」「性格の問題」では片付けられません。
不安、緊張を無理にどうにかしようとしても、かえって不安、緊張は強まります。
この状態に耐えられず、不安になる状況から逃げ出そうする回避行動がみられます。たとえば、「人前では、顔が赤くなって恥ずかしいから、人混みを避けてしまう。」のです。
しかし、逃げれば逃げる程かえって不安は強くなります。
ですから、不安であっても逃げてはいけません。不安があってもすべき行動はしっかりやっていくのです。
この行動指針を着実に実行する必要があります。
しかし、不安症状が強いとこのような行動指針を貫くのは至難の業です。
不安症状を軽減するためには、お薬による手助けが役立ちます。お薬の助けを借りながら、不安があっても必要な行動をとっていくのです。
お薬による治療では、これまでベンゾジアゼピン系抗不安薬が使われてきましたが、最近では主にSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が使われています。
SSRIにはベンゾジアゼピン系抗不安薬のような依存性がなく、過度に服薬量も増えることはありません。また、治療終了後に服薬を中止しやすいことが大きなメリットとなります。
SSRIによるお薬の治療で不安のレベルを下げつつ、不安になる状況から逃げずに必要な行動をとるようにする。
このような治療方針で臨めば、必ず社交不安症を乗り越えることができます。
院長 高橋道宏