うつ病の慢性化とその対策について

2025年1月13日(月)

うつ病は、誰にでも起こり得る心の病であり、適切な治療を受けることで多くの方が回復しています。しかし、研究によると、全体のうち約20~30%の人が、治療を受けても症状が完全には消えず、慢性化するケースがあるとされています(参考:World Health Organization, 2022)。

うつ病の慢性化は、仕事や日常生活のパフォーマンスを低下させ、日常生活に多くのマイナスの影響をもたらします。慢性化したうつ病にはどのように対処したら良いのでしょうか?

うつ病が慢性化する原因とは?

うつ病が慢性化する原因として、以下のようなことが挙げられます。

1. 休養と薬物療法がうまくいっていない
 治療の基本である休養と薬物療法がうまくいっていない場合、症状が改善しにくく、慢性化します。例えば、うつ病になる前の行動パターンが改善せず、無理な生活を続けている。服薬を自己判断で中断したり、自分に合わない薬でいつまでも治療を続けたていることが挙げられます。

2. ストレスへの対処不足
 うつ病の原因として大きな影響を与えるのがストレスです。職場や家庭、周りからの期待に対するプレッシャーなど、日常的に感じるストレスが解消されないと、うつ病からの回復が難しくなります。

3. 環境要因の改善不足
 うつ病の発病には仕事や人間関係など、環境そのものの問題が関係していることがあります。この場合、環境を見直さない限り、治療効果が十分に得られない可能性があります。

うつ病慢性化への対策と見直しのポイント
うつ病の慢性化を防ぎ、改善を目指すためには、治療の進め方や生活環境の見直しが必要です。以下に、具体的なポイントを紹介します。

1. 治療方法の再確認
 うつ病治療の基本は、休養と薬物療法です。適切に休養が取れているか、また薬物療法が自分に合った内容で進められているかを定期的に確認することが大切です。薬の種類や量は、うつ病の症状や体調によって変更する必要があるため、症状をしっかりと伝えるなど、医師と密な連携を取るようにしましょう。

2. ストレスへの対応力を身につける
 慢性化を防ぐためには、ストレスにうまく対処することが必要です。瞑想や深呼吸などのリラクゼーション法を取り入れること、趣味や運動で気分転換を図る、また必要に応じてストレスマネージメントについて学ぶことが重要です。

3. 生活環境の改善
 うつ病の原因が環境要因にある場合、可能な範囲でその環境を改善することが必要です。例えば、仕事の負担が大きすぎる場合は、上司と相談して業務量を調整する、また自分に合った働き方ができるように転職を検討したりすることも選択肢の一つです。

希望を持って治療を進める

うつ病が慢性化してしまったとしても、それで「治らない」ということはありません。長期間うつ病に悩まされた方でも、新しい治療法やサポートを得たことで症状が改善した事例は少なくありません。重要なのは、焦らず、希望を持って治療を続けることです。

最後に、うつ病の治療は一人一人のニーズに合わせた方法が必要です。「自分にとって最適な治療法」を見つけるためにも、医師や専門家としっかりと相談しながら治療を進めていきましょう。希望を持ち、少しずつでも前進していくことで、必ず改善への道が見えてきます。

参考資料:
* World Health Organization. (2021). Depression fact sheet.
(リンクはこちら)

高橋心療クリニック
院長 高橋道宏

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