パニック障害——「また発作が起きたらどうしよう」が病気を長引かせる
2026年6月1日(月)
パニック障害の患者さんから、
「発作そのものよりも、次の発作が怖いんです」
という言葉をよく聞きます。
初めて発作を経験すると、突然の動悸や息苦しさ、めまいなどに襲われ、「このまま死んでしまうのではないか」と感じるほど強い恐怖を覚えることがあります。そのため救急受診に至ることもありますが、検査では心臓や脳に異常が見つからないことが少なくありません。
パニック障害とは
パニック障害は、強い不安や恐怖とともに、動悸、息苦しさ、めまいなどの症状が突然現れる病気です。
発作は多くの場合10〜30分ほどで自然に落ち着きます。しかし問題は、その後に生じる
「また発作が起きたらどうしよう」
という不安です。
この不安は「予期不安」と呼ばれ、日常生活に大きな影響を与えることがあります。
発作よりも問題となる「予期不安」と回避行動
パニック発作が起きると、「心臓や脳の病気ではないか」と心配になる方もいます。しかし、必要な検査で異常がなければ、発作そのもので命に危険が及ぶことはほとんどありません。
パニック障害では、本来危険ではない状況でも、脳が危険だと判断してしまうことがあります。
その結果として、動悸や息苦しさなどの症状が現れるのです。
そして発作を経験すると、「また起きるかもしれない」という予期不安から、発作が起きそうな場所や状況を避けるようになります。
例えば、
・電車やバスに乗る
・人混みに行く
・高速道路を運転する
・映画館や美容院など、すぐに退出しにくい場所に行く
といった場面です。
避けることで一時的に安心できますが、不安を乗り越える機会が失われ、かえって不安が続きやすくなります。実際には、病気を長引かせているのは発作そのものではなく、この予期不安と回避行動であることが少なくありません。
回復のために大切なこと
治療では薬が役立つことがありますが、それだけで十分とは限りません。
回復のために重要なのは、
「不安があっても行動できた」
という経験を少しずつ積み重ねることです。
例えば、
・まずは駅まで行ってみる
・次に一駅だけ電車に乗ってみる
・慣れてきたら移動距離を少しずつ伸ばしてみる
といったように、無理のない範囲で段階的に挑戦します。
こうした経験を重ねることで、脳は
「電車に乗っても大丈夫だった」
と学習し、不安は徐々に弱まっていきます。
おわりに
パニック障害は決して珍しい病気ではなく、適切な治療によって改善が期待できます。
大切なのは、発作そのものだけでなく、「また発作が起きるかもしれない」という不安に振り回されないことです。
焦らず一歩ずつ行動範囲を取り戻していくことが、回復への大切な道筋になります。
高橋心療クリニック
院長 高橋道宏


