うつ病-休職と職場復帰

うつ病の治療について、近年企業の理解はかなり進んでいます。最近では復職に当たり企業側の医師である産業医が当事者と企業の間で調整に当たることが多く、リワークと呼ばれる復職支援プログラムを勧める企業も多くなりました。最近の国内調査では、「これまでにうつ病を経験した人は約15人に1人、過去12ヶ月間にうつ病を経験した人は約50人に1人である」という結果が出ています。ある程度以上の規模の会社になると、必然的に常時社員の何人かがうつ病で休職している計算になります。実際多くの企業で、人事担当者の方はうつ病になった社員への対応にかなりの時間をかけておられます。

うつ病は回復する病気ですが、それと同時に再発の可能性が低くない病気です。回復不十分な状態で復職すると再度休職に追い込まれていまいます。復職後短期間で再休職になると、勤務先から仕事への適性能力に疑問符がつくこともあります。ですからうつ病の方ご本人と勤務先のため、安定して勤務し再休職に追い込まれない工夫と配慮が治療上求められています。多くの企業で「安定的勤務」は、「復職後たとえ体調を崩し仕事を休んだとしても、休むのは概ね1ヶ月で2日程度以内」と考えられています。

復職後安定的に仕事をするためには、うつ病で失われた体力をつけることが必要です。うつ病は心の病気であると同時に身体の病気でもあるからです。「身体がだるい」「疲れやすい」といった症状はいつまでも治りにくく、復職の障害になることが多いからです。もしうつ病になった原因が職場のストレス(人間関係、仕事の内容)にあるなら、職場環境の調整を行うことも有益です。復職に当たっては、少しずつ仕事の時間を増やしていく段階的復職を行うことで再発を予防することができます。

うつ病は真面目で仕事熱心な方がかかることが多いため、本来職業人として有能な方が少なくありません。「長く休職していると経済的に大変」「職場の同僚に申し訳ない」「家族が早く復職しろと言う」など復職を焦る気持ちは多くの患者さんにみられます。しかしながら、本来の素晴らしい能力をうつ病で埋もれさせることなく社会のために役立てていただくため、復職は焦らず主治医と話し合いながら注意深く行うことをお勧めします。

院長 高橋 道宏

アーカイブ

PAGE TOP