こころの病気と不眠

2016年5月16日 月曜日 曇り時々晴れ

こころの病気になると眠れなくなることが少なくありません。うつ病、双極性障害、不安障害、適応障害など多くのこころの病気で不眠がみられます。また、不眠はこころの病気が再発する時のサインであることも少なくありません。このようにこころの病気と不眠は深いつながりがあり、こころの病気を治療するためには、不眠に対する適切な対応が必要です。

不眠が続くと、疲労がたまり、集中力が乏しくなります。日中眠くて仕方なく、居眠りをしたり、昼寝が長くなるなど生活リズムが乱れやすくなります。このような状態ではこころの病気が治りにくいため、寝る前にスマホを使うなど不眠の原因となる生活習慣の改善に配慮しつつも、治療では睡眠薬を使用することがあります。きちんと眠り、規則正しい生活を送ることが病気の回復にとても役立つからです。

「睡眠薬を飲むとクセになるのではないか?」と心配する患者さんがいます。睡眠学の権威、スタンフォード大学のウイリアムCデメント教授は、著者「人はなぜ人生の3分の1も眠るのか? 講談社」で「現在処方されている薬には、習慣性があるという根拠はどこにもない。」と書いています。私の患者さんでも、病気が治るにつれ睡眠薬は徐々に不要になる方が多いです。睡眠薬自体にではなく、睡眠薬依存の原因は、むしろ睡眠薬の飲み方に関係があるのです。

「睡眠薬はすべてクセになるもの」と思い込む必要はありませんが、回復をあせり、処方された以上の睡眠薬を飲まないように注意しましょう。睡眠薬が過剰になると翌日に眠気が残るなど、かえって生活リズムが乱れるもとになります。また、このような不適切な睡眠薬の飲み方が、「精神依存」という睡眠薬に頼るこころの体質をつくり出します。あせらず徐々に不眠を治しましょう。

院長 高橋 道宏

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