うつ病の回復は「元通り」だけではありません

うつ病の回復は「元通り」だけではありません

2026年5月18日(月)

うつ病や適応障害で休職されている方を診察していると、多くの方がこうおっしゃいます。

「早く前の自分に戻りたい」
「前みたいに家事がしたい」
「仕事を普通にできるようになりたい」

こうしたお気持ちは、とても自然なものです。

動けなかった時期が長ければ長いほど、焦る気持ちも強くなるでしょう。

私たちはどうしても、「回復=病気になる前の状態に戻ること」と考えがちです。

元の生活に戻ることこそが、治療のゴールだと思われている方も少なくありません。

もちろん、それ自体は悪いことではありません。

しかし診察室で患者さんとお話ししていると、回復には、それだけではない別の形もあるのではないかと感じることがあります。

診察室では、このような方がおられます

うつ病になってから、毎日の食事作りが大きな負担になってしまった主婦の方です。

もともと責任感が強く、とても真面目な方でした。

「ご飯を作らないなんてありえない」
「自分が頑張らないといけない」

最初はそのように、ご自身を責めながら話されていました。

しかし、無理をして以前と同じようにやろうとするほど、気持ちは落ち込み、笑顔が減り、毎日がつらくなっていきました。

そこで、「毎日必ず食事を作らなければいけない」という考え方を、少しだけ見直してみることになりました。

惣菜を使う日を増やしてみる。
家族が食事を準備する日を作ってみる。

ご家族も最初は戸惑うことがあります。

「以前は普通にできていたのに」
「いつになったら元に戻るのだろう」

そう感じることもあるかもしれません。

しかし、無理をしていた頃より、今の方が穏やかに笑って過ごせている。

そんな変化がみられることがあります。

回復には、別の形もあります

うつ病の治療は、「病気になる前の100点の自分」に戻ることだけが目標ではありません。

病気になる前の生活が、自分でも気づかないうちに少し無理を重ねていた生活だった、という方もおられます。

病気をきっかけに、自分に合った生活の形を見つけていくことがあります。

少し役割を減らす。
少し人に頼る。
少し頑張りすぎない。

それも一つの工夫なのかもしれません。

以前と全く同じ生活に戻らなくても、笑顔が増え、穏やかに過ごせるようになっているのであれば、それも回復の大切な形なのだと思います。

「元通り」だけが回復ではありません。

今の自分に合った暮らし方を、少しずつ見つけていく。
それも、前へ進むための大切な一歩です。

高橋心療クリニック
院長 高橋道宏

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