強迫症——「分かっているのにやめられない」
2026年6月22日(月)
日常生活の中で、
「戸締まりをしたはずなのに、何度も確認してしまう」
「手を洗ったばかりなのに、まだ汚れている気がする」
「ガスの元栓を閉めたかどうか不安になり、何度も戻って確認してしまう」
このような経験はないでしょうか。
誰でも多少の心配や確認をすることはあります。
しかし、その不安があまりにも強く、確認や手洗いに長い時間を費やしてしまったり、仕事や学校生活に支障が出たりしている場合は、「強迫症」という病気が背景にあるかもしれません。
強迫症とは
強迫症は、
「頭から離れない不安な考え(強迫観念)」
と、
「その不安を打ち消すための行動(強迫行為)」
を繰り返してしまう病気です。
例えば、
「鍵を閉め忘れたかもしれない」
という考えが浮かぶと、
何度も鍵を確認しなければ安心できなくなります。
あるいは、
「汚れているかもしれない」
という不安から、
何十分も手を洗い続けてしまうことがあります。
本人も、
「やりすぎだと分かっている」
「確認しなくても大丈夫かもしれない」
と感じています。
それでも不安が強すぎて、やめることができないのです。
不安を減らそうとする行動が不安を長引かせる
強迫症では、一見すると不思議なことが起こっています。
確認をすれば安心できるように思えますが、実際には確認することで病気が維持されてしまうのです。
例えば、
↓
確認する
↓
一時的に安心する
↓
しばらくすると再び不安になる
↓
また確認する
という流れです。
脳は、
「確認したから安心できた」
と学習してしまいます。
すると次に不安が生じたときも、
「確認しなければ危険だ」
と判断するようになります。
その結果、確認行為は増え、不安も強くなっていきます。
これが強迫症の悪循環です。
脳の中では何が起きているのでしょうか
強迫症では、不安や恐怖に関係する脳のネットワークが過剰に働いていると考えられています。
本来であれば、
「確認したからもう大丈夫」
で終わるはずの情報が、
いつまでも脳の中で警報として鳴り続けてしまうのです。
そのため、
「本当に大丈夫だろうか」
という不安が繰り返し浮かび上がってきます。
意志が弱いからでも、性格の問題でもありません。
脳の働き方の問題なのです。
回復のために大切なこと
治療では、SSRIなどのお薬が役立つことがあります。
これらのお薬には、過剰になった不安を和らげる働きがあります。
また、お薬とともに大切なのは、
「確認しない練習」
を少しずつ行うことです。
例えば、
これまで5回確認していたものを4回にしてみる。
手洗いの時間を少しだけ短くしてみる。
そうした小さな取り組みを積み重ねていきます。
最初は不安が強くなりますが、その不安はやがて自然に下がっていくことを脳が学習していきます。
その経験が増えるほど、強迫症は少しずつ改善していきます。
おわりに
「分かっているのにやめられない」
それが強迫症のつらさです。
周囲からは理解されにくく、一人で悩み続けている方も少なくありません。
しかし強迫症は、適切な治療によって改善が期待できる病気です。
一人で抱え込まず、早めに医療を受けることを検討してみてください。
焦らず一歩ずつ、自分らしい生活を取り戻していきましょう。
高橋心療クリニック
院長 高橋道宏


