検査で異常がないのに続く体の不調——「心身症」とは?原因と治療

検査で異常がないのに続く体の不調——「心身症」とは?原因と治療

2026年9月28日(月)

病院で検査を受けても「異常はありません」と言われたのに、胃の痛みや頭痛、動悸などがなかなか良くならない。

あるいは、持病の血圧やアトピー、喘息などが、忙しい時期や強いストレスがかかると急に悪化してしまう。

診察室では、このような体の不調に長く悩まされている方からご相談を受けることがよくあります。

「周りからは気の持ちようじゃないかと言われる」
「検査で原因が見つからないと、自分が大げさなのかと責めてしまう」

しかし、これらは決して「気のせい」でも「意志の弱さ」でもありません。背景には、こころと体が密接に影響し合って起こる「心身症」という状態が関係していることがあります。

 

心身症とは?うつ病や精神疾患との違い

「心身症」は、うつ病や不安障害といったメンタルな病気そのものとは異なります。

日本心身医学会では、心身症を、身体疾患の中で、その発症や経過に心理社会的な要因が密接に関与し、器質的あるいは機能的な障害が認められる病態としています。

わかりやすく言うと、「体の病気や不調があり、その悪化や発症に日々のストレスや生活環境が深く関わっている状態」のことです。

代表的な心身症には、以下のようなものがあります。

・消化器系:過敏性腸症候群(下痢・便秘を繰り返す)、機能性ディスペプシア(胃の不快感や痛み)、胃潰瘍

・循環器系:本態性高血圧症

・呼吸器系:気管支喘息、過換気症候群

・神経・筋肉系:緊張型頭痛、片頭痛、肩こり、顎関節症

・皮膚系:アトピー性皮膚炎、円形脱毛症、じんましん

これらは「体の病気や不調」ですが、その発症や経過に心理的な緊張やストレスが影響していることがあります。

 

なぜストレスや心が体に影響を与えるのか(自律神経の仕組み)

私たちの体は、意識しなくても自律神経(交感神経、副交感神経)やホルモン、免疫系がバランスを取りながら、血圧や体温、胃腸の動きなどをコントロールしています。

しかし、長期間にわたって過度なストレスや緊張が続くと、自律神経やホルモン、免疫系などの働きに影響し、体にさまざまな変化が起こることがあります。血圧が上がったり、胃腸の働きが乱れたり、筋肉が緊張して痛みが起こったりします。

また、つらいことがあっても、「これくらいは我慢しなければ」「自分が頑張ればいい」と考え、気持ちを抑えてしまうことがあります。その状態が長く続くと、自分にとってはそれが当たり前になり、ストレスとして意識しにくくなることも少なくありません。

心身症による症状は、決して「気の持ちよう」だけで治るものではありません。実際に体に変化が起きており、その変化は自分の意思だけで簡単に抑えられるものでもありません。

 

心身症のサインに気づくためのヒント

自分のストレスに気づくためには、体調の変化に目を向けてみることも役立ちます。

「仕事に行く日の朝になると胃が痛くなる」
「休日になると頭痛が軽くなる」
「忙しい時期になると体調を崩しやすい」

このように、症状がいつ強くなり、いつ軽くなるのかを振り返ると、心と体の関係に気づけることがあります。症状の記録をつけたり、気になることをメモしたりしておくと、受診の際に医師へ伝えやすくなります。

 

心療内科における心身症の治療アプローチ

心身症の治療では、「体」と「こころ」の両面からアプローチすることがとても大切です。

まず、体の病気や症状に対して必要な検査や治療を行います。同時に、その症状の発症や悪化にストレスや生活環境がどのように関係しているのかについても考えていきます。

そして、生活そのものを整えていくことも大切です。森田療法には「健康な生活」という考え方があります。以前のブログ「森田療法から見た神経質性格の生かし方:不安を成長の力に変える」でもご紹介しましたが、症状をなくすことだけにとらわれるのではなく、睡眠や食事など生活のリズムを整え、その日に必要なことをできる範囲で行っていきます。体調を気にして生活を狭めすぎず、日々の生活を続けていくことが、こころと体の回復につながります。

必要に応じて、不安や気分の落ち込みなどが強い場合には、抗うつ薬、抗不安薬や漢方薬を用いることもあります。

大切なのは、「病気だけを診る」のではなく、「生活背景や心を含めた一人の人間全体を診る」ことです。

 

おわりに

体の不調が続くと、「どうして治らないのだろう」「自分の体が弱いからだ」と焦りや不安が募るものです。

心身症では、体の症状が、こころや生活の負担を知らせるSOSサインになっていることがあります。頭やこころでは「まだ大丈夫」「これくらい平気だ」と思っていても、体はとても正直です。

このSOSサインをきっかけに、生活の中で無理を重ねているところはないか、立ち止まって見直してみることが大切です。

つらい症状を一人で抱え込まず、早めに医療機関へ相談することを検討してみてください。

 

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芦屋市 高橋心療クリニック
院長 高橋道宏

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