適応障害——仕事に行けないのは「甘え」でしょうか?
2026年9月14日(月)
「仕事の日になると体調が悪くなります。でも休日は比較的元気です」
「朝になると吐き気がして、会社に行けません」
「休みの日には出かけられるのに、どうして仕事には行けないのでしょうか」
確かに、適応障害は一見すると「甘え」のように見えることもあります。患者さん自身からも、またご家族など周囲の方からも、「これは甘えではないでしょうか」という疑問の声が寄せられます。
では、適応障害では何が起きているのでしょうか。
「仕事に行きたくない」だけでは適応障害ではありません
仕事で嫌なことがあったり、「今日は会社に行きたくない」と思ったりすることは誰にでもあります。それだけで病気というわけではありません。
適応障害では、仕事や人間関係などの明らかなストレスをきっかけとして、不安、気分の落ち込み、不眠、動悸、吐き気など心や体の症状が現れ、仕事や日常生活に支障が生じます。
大切なのは、「仕事に行きたくない」という気持ちではなく、ストレスによってどのような症状が現れ、生活にどの程度支障が出ているかということです。
適応障害ではストレスに対する「とらわれ」があります
適応障害の病態は、まだ十分に明らかになっていません。しかし、ICD-11(国際疾病分類第11版)では、その特徴が以前より具体的に示されています。
中心となる症状の一つが、ストレスやその結果に対する「とらわれ(preoccupation)」です。
「明日も会社に行かなければならない」「また同じことが起こるのではないか」とストレスについて繰り返し考え、頭から離れなくなります。そのため、仕事をしていない時間にも気持ちを休めることが難しくなります。
もう一つの重要な特徴が「適応の失敗(failure to adapt)」です。「とらわれ」が続き、それまでできていた仕事や日常生活を続けることが難しくなっていきます。
休日に元気なのはおかしいのでしょうか?
適応障害では、症状と原因となったストレスとの結びつきが強いことが特徴です。
職場がストレスになっていれば、仕事のことを考えると不安や緊張が強くなります。一方、休日にはストレスから離れるため、症状が軽くなります。
したがって、「休日は元気なのに仕事には行けない」という状態は矛盾するものではありません。休日に外出できるという一つの行動だけを見て、「甘えている」と判断することはできません。
「とらわれ」からどう抜け出すのでしょうか?
ストレスについての苦痛な考えを「考えないようにしよう」と抑え込もうとしても、なかなかうまくいきません。考えないようにするほど、かえってそのことに注意が向いてしまいます。
大切なのは、「とらわれ」がなくなるのを待つのではなく、「とらわれ」があっても行動していくことです。朝起きる、食事をする、外出するなど、できることから生活を整えていきます。
同時に治療の中で、何が自分にとって大きなストレスなのか、これからどうしたいのか、こころを整理することも大切です。生活の方向性を少しずつ見いだしながら行動していくことで、「とらわれ」が弱くなり、生活への適応を取り戻していくことが回復につながると考えています。
適応障害の治療では、これまでにわかっていることをもとに、患者さんがこころを整理し、今後の方向性を見いだせるよう、日々の診療の中で治療方法を工夫しています。
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高橋心療クリニック
院長 高橋道宏


