2026年9月21日(月)
診察室で、このようなお話を伺うことがあります。
「電車に乗ろうとすると、以前の発作を思い出して動悸がしてきます」
「急に気分が悪くなるのではないかと思うと、一人で外出するのが怖くなります」
「発作が治まっても、『また起きたらどうしよう』という不安が一日中頭から離れません」
激しい動悸や息苦しさに突然襲われる「パニック発作」はとても苦しいのですが、それ以上に日常生活を狭めてしまうのが「予期不安」です。
予期不安とは何でしょうか
パニック発作を一度経験すると、脳はその恐怖を記憶します。
そうすると、「またあの場所で発作が起きるのではないか」「逃げられない場所で具合が悪くなったらどうしよう」と、次の発作が起きる前から、発作を恐れる気持ちが強くなります。これが予期不安です。
朝起きたときから通勤のことを考えて不安になる。電車に乗る前から動悸がする。以前は何も考えずにできていたことに、不安を感じるようになります。
予期不安が強まると、発作が起きた場所や、すぐに助けが得られない場所を避けるようになります(広場恐怖)。電車に乗れない、人混みに入れない、一人で外出できない。こうした回避が少しずつ広がり、仕事や日常生活に大きな支障をきたします。
なぜ予期不安はこれほど強くなるのでしょうか
パニック障害では、危険を察知する扁桃体という部分が過敏になっています。
心拍が上がった、息苦しい。こうした身体のサインを感じ取ると、「また発作が始まるかもしれない」と脳が判断し、身体が一気に緊張します。その結果、実際に動悸や息苦しさが強まり、「やっぱり発作だ」と確信してしまう。
「不安を感じることで、身体症状がさらに強まる」という悪循環が始まります。
回復のために大切なこと
治療では、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)などの薬が有効です。脳の過敏さを和らげることで、発作そのものを抑え、予期不安を小さなものにすることができます。
ただし、薬を飲めばすべての不安がなくなるわけではありません。
大切なのは、「不安を完全に消そうとしない」ことです。「不安を感じてはいけない」と抑え込もうとするほど、かえって不安になってしまいます。多少不安があっても、それはパニック障害による現実離れした不安であることを認識し、これまで通りに行動することです。
不安があるからと言って、必要な行動を後回しにしないことです。日常生活で必要なことをできる範囲で少しずつやっていく。「通勤しなくてはならないから、少し早めに起きて、各駅停車で通勤する」など。
「不安があっても、できた」「発作が起きそうだったが、行動しているうちに治まった」という経験を積み重ねることで、予期不安は少なくなっていきます。
おわりに
「また起きるのでは」という恐怖から、行動範囲が狭くなってしまっている方は少なくありません。
しかし、パニック障害は適切な治療によって改善する病気です。
一人で抱え込まず、医療を受けることを検討してみてください。
「不安があっても、行動することで不安がなくなった」という経験を積み重ねることが、やがて回復につながっていきます。
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芦屋市 高橋心療クリニック
院長 高橋道宏


