森田療法は何を教えているのか?

2018年11月5日 月曜日

森田療法は1919年に、森田正馬先生によって始まった心の病気の治療法です。始まってから、来年でちょうど100年になります。森田療法は、不安神経症、強迫神経症などを対象としていましたが、今ではうつ病や摂食障害などにも幅広く応用されています。

森田療法は、森田先生ご自身が神経症を患い、病を克服する中で出来上がった治療法です。ですから、患者目線に立った治療法と言うことができるでしょう。また、多くの治療法が海外で開発される中で、日本人オリジナルの治療法であることも特徴です。心の病気は、国や文化によりその表現形が異なることもあり、日本人の心にあった治療法が必要なのです。

前回のブログで書かせていただいたように、心の病気は個人差が大きなことが特徴です。お一人お一人の生活環境や家庭環境、体質などを考慮しなければ治療は成り立ちません。海外で作られた治療法は参考になる点が多々ありますが、日本人の心を理解した森田先生による治療法は、多くの日本人に光明を与えるものとなっています。

森田療法は、「あるがまま」を大切にします。「あるがまま」とは別の言葉で言うならば、自然体です。つまりジタバタしないと言うことです。神経症など心の病気になると、どうしても焦る、ジタバタしてしまうものです。その結果、日々自分がなすべきことが手につかなくなり、未達のまま、ますます不安になるという悪循環に陥ります。

森田療法はこのような悪循環を断ち切るという意味で革新的なものです。それはおよそ100年前に革新的であったと同様に、今日多くの治療法がある中で、革新的なものであり続けています。

森田療法では、「あるがまま」に症状を受け止めながら、ジタバタせず、自分がなすべきことに注力し行動すべきであると教えています。神経症などでは、自分が不安になり何もできないと錯覚しますが、実際には精神的にも身体的にも健康で、普通に行動できることが少なくありません。

「あるがまま」に不安を受け止めながら自分のなすべきことに集中する中で、不安にとらわれている状態から、解放されていくことを実感することができます。

これがまさに神経症の治療における最も重要なプロセスです。森田療法であろうとなかろうと、このようなプロセスなくして神経症が真の意味で改善に向かう事はありません。不安神経症は薬を飲むだけでは決して完治することはありません。薬で不安を減らすことができても、全く不安にならないわけではありません。

森田先生が教えておられるような「あるがまま」に不安を受け止め、自分のなすべきことを普通にする、このような行動こそが神経症を克服することにつながるのです。

 

院長  高橋道宏

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