アルツハイマー型認知症——年齢による物忘れとの違い
2026年7月27日(月)
夏休みやお盆が近づき、久しぶりに実家へ帰省される方も多い季節です。
ご高齢のご家族と過ごす時間が増えるなかで、こんな変化に気づくことがあります。
「同じことを何度も言うようになった」
「財布や鍵の置き場所が分からず、家族が隠したと言う」
「以前はできていた料理やお金の管理が難しくなった」
年齢を重ねれば、誰でも人の名前がすぐに出てこない、物を置いた場所を忘れることがあります。
しかし、物忘れが少しずつ増え、日常生活に支障が出るようになっている場合は、アルツハイマー型認知症が背景にあるかもしれません。
年齢による物忘れとの違い
加齢による物忘れでは、体験の一部分を忘れることが多く、きっかけやヒントがあれば思い出せます。
例えば、昨日の夕食に何を食べたか思い出せなくても、「魚を食べたでしょう」と言われると思い出すのです。
ところが、認知症による物忘れでは、食事をしたこと自体が記憶から抜け落ちてしまいます。
そのため、
・食事をした直後に「まだ食べていない」と言う
・同じ質問を短時間に何度も繰り返す
・同じ物を何度も買ってくる
といった変化が現れます。
さらに進行すると、日時や場所が分からなくなったり、料理、買い物、服薬管理、金銭管理など、これまでできていたことが難しくなります。
ご本人を責めても改善しません
ご家族としては、「さっきも言ったでしょう」「どうして覚えていないの」と言いたくなることがあるかもしれません。
しかし、ご本人はわざと忘れているわけではありません。
記憶に関係する脳内の海馬などの働きが少しずつ変化しているために起こることで、意志や努力でどうにかなるものではないのです。
忘れていることを何度も指摘されると、不安や混乱が強くなり、怒りや言い争いになりやすくなります。
正しいことを理解してもらおうと繰り返し説明するよりも、まず不安を和らげることが大切です。
例えば、「さっき食べたでしょう」と訂正するのではなく、「お腹が空いたのですね。少しお茶を飲みましょうか」と受け止めるのです。
認知症の方との関わりでは、正しさよりも安心を優先した方がよいのです。
医療機関を受診する意味
物忘れにはさまざまな原因があります。
アルツハイマー型認知症だけでなく、うつ病などの精神疾患が関係していることもあります。
早めに受診することで原因を確かめ、必要な治療や介護保険によるサービスなど生活上の支援につなげることができます。
おわりに
「年齢のせいだから仕方がない」とあきらめているご家族は少なくありません。
しかし、同じことを何度も尋ねる、料理や金銭管理が難しくなる、慣れた場所で迷うといった変化があれば、一度医療機関で相談することをおすすめします。
大切なのは、できなくなったことを責めることではありません。
ご本人の不安や混乱を減らし、その方らしい生活をできるだけ長く続けられるように支えていくことなのです。
高橋心療クリニック
院長 高橋道宏


